20「生きるとは?土方歳三」の授業分析 2013年の中1生徒
この漫画もいろいろと使えるんですよね。実際に土方さんが亡くなられたところにも行きましたよ。その写真を授業で使いました。
授業分析
中学1年5組で実施された道徳授業「生きるとは?」の授業資料(ワークシートおよびマンガ教材)に基づき、授業の構成、生徒の思考の変容、教育的成果、および考察をまとめた分析結果です。
--------------------------------------------------------------------------------
1. 授業の全体像と展開構成
本授業は、マンガ教材(『最後のレストラン』の土方歳三登場エピソード等)を活用し、「生きること」の意味を段階的に掘り下げていく構成となっています。
- 発問1(導入): 「『生きている』とはどんな状況か」を問い、生徒の直感的な「生」のイメージを引き出す。
- 発問2・3(展開①): 歴史的人物である土方歳三と15歳の市村鉄之助を取り上げ、戦場で命を繋ぐ意味や意志の継承について考える。
- 発問4(展開②): 料理人が干物ホタルイカを調理して「生き返らせる」という場面から、「食材の命を活かす=血肉となり役目を果たす」という対比的・象徴的なメッセージを読み取る。
- 発問5・まとめ(終末): 「役目を果たす生き方(プラスに生きる)」と「他者の邪魔をする行為(マイナスに生きる)」を整理し、生徒自身の今後の生き方に引き付けて行動指針を立てさせる。
--------------------------------------------------------------------------------
2. 生徒(中学1年5組)のワークに見られる学びと変容
① 生物学的理解から「価値的・社会的生」への昇華
- 授業冒頭(発問1): 「心臓が動いている」「呼吸をする」「血が通う」といった、物理的・生物学的な生命維持現象を中心とした記述が大多数を占めていました。
- 授業展開後(発問4・5・感想): 料理人の言葉や土方の生き方に触れることで、「自分の役割・使命を果たすこと」「人の役に立ち頼りにされること」「他者のために命や心を生かすこと」という、精神的・社会的な意味での生き方へと捉え方が大きく深まっています。
② 視覚的・物語的教材(マンガ)による高い主体性と満足度
- ワークシートの「楽しかったですか」「ためになりましたか」の自己評価において、多くの生徒が「5」や「4」の極めて高い評価をつけています。
- 「歴史や土方歳三のことがわかって面白かった」「マンガや映像で命の大切さがよく分かった」という記述が散見され、抽象的・重重になりがちな「生命の尊重」というテーマに対し、マンガという親しみやすい媒体が生徒の思考を強く引き出す触媒となっています。
③ 日常の倫理観・行動指針への接続
- 発問5や感想欄では、「人の役に立ってプラスに生きたい」「いじめや暴力をせず、困っている人を助けたい」といった前向きな意欲が具体的に語られています。
- 単なる歴史の学習にとどまらず、学級内の人間関係(いじめ防止や相互尊重)や自身の日常の態度へと視点が直接還元されています。
--------------------------------------------------------------------------------
3. 教育的成果と評価
- 概念の可視化と実感化: 「命を生かす=料理で美味しく食べてもらい役目を果たさせる」というストーリー上の比喩が、中学生にとって「自分も他者や社会の中で役目を果たす」という概念を理解する強い実感を与えています。
- 教育実習生の視点での評価: 同席した教育実習生のワークシートにおいても、「生徒が惹きつけられて真剣に考えていた」「他教科や現代の視点とも結びつく優れた道徳授業」と高い評価が記されています。
--------------------------------------------------------------------------------
4. 課題および今後の深掘りの視点
- 「プラス/マイナス」の二元論からの発展: 「役目を果たす=プラス」「邪魔をする=マイナス」という明確な提示は理解しやすい反面、「自分の役割が見つからない時」や「葛藤・挫折がある時にどう生きるか」といった、より複雑な人間の悩みに寄り添う問いを追加することで、さらに多角的な道徳的思索へ繋げられる可能性があります。
土方の生き様と道徳
道徳授業「生きるとは?」において、土方歳三のエピソード(新選組の生き様や15歳の市村鉄之助を戦場から逃がした場面など)を題材として活用したことには、生徒の学びにおいて以下のような大きな効果が見られました。
--------------------------------------------------------------------------------
1. 「生物学的な生命維持」から「意志や役割を持って生きる」ことへの概念の深化
授業冒頭では「息をしている」「心臓が動く」といった物理的な生の定義が主流でしたが、土方歳三が市村鉄之助に命じて戦場を脱出させ「新選組の証や意志を次世代へ引き継がせた」エピソードを通じ、生徒たちは「自分の役割を果たして生きること」や「志・信念を伝えること」こそが生きる意味なのだと捉え直すことができました。
2. 歴史的人物に対するイメージの変容と多角的な視点の獲得
当初は「人殺し」「悪者」「よく分からない」といったネガティブまたは漠然とした印象を持っていた生徒たちが、マンガやエピソードに触れることで「仲間や信念を大切にしていた」「最後まで一生懸命生きたすごい人だった」と印象を変化させ、人物の信条や背景に深く共感する姿が見られました。
3. 生徒の思考を引き込むストーリー性と自己の生き方への還元
- 関心・意欲の向上: 新選組や土方歳三というストーリー性のある題材や映像・漫画の導入により、中学生にとって難解になりがちな「生命の尊重」というテーマへ親しみやすく引き込まれる効果がありました。
- 日常の行動指針への接続: 授業後の感想では、「自分も土方さんのように信念を持ちたい」「困っている人を助け、自分の役割を果たしてプラスに生きたい」といった、生徒自身の日常や今後の生き方に対する具体的で前向きな決意が数多く引き出されました。
--------------------------------------------------------------------------------
教育実習生の感想記録
資料に記録されている3名の教育実習生は、いずれも授業の自己評価欄で「楽しかったですか」「ためになりましたか」の双方に最高評価の「5」をつけており、授業の構成や教材の工夫に深い感銘を受けています。それぞれの感想の詳細は以下の通りです。
--------------------------------------------------------------------------------
1. 教育実習生1の感想
- 生徒の思考の変容への注目: 授業冒頭では生徒からありきたりな意見しか出ていなかったものの、順を追う中でストーリーに惹きつけられ、「生きるとは何か」について真剣に考えるようになっていったプロセスを高く評価しています。
- メッセージの明確さ: 最後の問答を見た際に「その答えや考え方にハッとさせられた」とし、生徒の興味・関心を高めつつ伝えたい内容が非常に分かりやすく構成されていると述べています。
- 今後の抱負: 自身が道徳の授業を行う機会があれば、「ぜひ参考にさせていただきたい」と強い意欲を示しています。
2. 教育実習生2の感想
- 「道徳」に対するイメージの変化: 本授業を参観したことで、それまでに持っていた道徳授業に対するイメージが良い意味で変わったと語っています。
- 教育の本質的な共通性の実感: テーマの提示、生徒の意見の受容、生徒の思考の先導といった道徳授業の重要な要素は、他教科とも共通する指導の根幹であると捉えています。
- 他教科への応用意欲: この講義で学んだ道徳授業のポイントや応用方法を、「道徳だけでなく他の教科にも活かしていきたい」と記述しています。
3. 教育実習生3の感想
- マンガ教材の導入と問いの深め方: 漫画を活用したことで歴史上の人物像や関係性が非常に分かりやすく、問いを重ねて内容を深めていくことで徐々にテーマの本質が見えてくる展開の面白さを評価しています。
- 大人としての気づき: 授業の奥深さに触れ、「大人になって道徳の時間が必要であることを思い知らされた」と述べています。
- 指導者としての課題意識: 子どもたちに伝える難しさを感じつつも、まず自分自身の道徳的価値観をしっかり把握し、今後の授業づくりのための必要な視点を養いたいとしています。
--------------------------------------------------------------------------------
共通する評価のポイント
- 生徒を引き込むストーリー性と教材の工夫: マンガやドラマティックな展開を活用することで、抽象的なテーマでも生徒が主体的に思考を深められる点が評価されています。
- 実習生自身の教育観・生き方への波及: 単なる授業見学にとどまらず、教育実習生自身が「ハッとさせられた」「道徳観を見つめ直した」と感じるほど、メッセージ性の強い授業であったことがうかがえます。




コメント