34「ジェンナー」の授業分析 2023年の中3生徒
これは、学習漫画をパワポで見せながら使いました。長いので、けっこう端折りました。
コロナ感染の時の医療に感謝するつもりで作成しました。
まだ、1度しかしていません。もっと使用と思うのですが、他にも定番がありすぎて、なかなかチャンスがないですね。分析は、本当に私が気がつかない部分もしっかりとしてくれています。
1. 授業の概要と指導のねらい
道徳科における偉人や歴史的事実を題材とした教材は、単に歴史的偉業や先人の業績を感心・称賛して終わる追体験にとどまらず、そこに込められた人間の強さ、信念、そして社会への情熱に触れさせることで、生徒自らの人間性を高める上で極めて大きな意義を持っています。特に、ジェンナーとハンターによる医学史上の困難な挑戦を描いた教材「ジェンナー」は、未知の疾病に対する探求心や不屈の意志を鮮明に示す卓越した素材です。現代の生徒が、こうした歴史的教材を通して「物事を多面的・多角的に考える指導」のもと、「信念」「努力」「他者貢献」といった抽象的になりがちな道徳的価値を決して他人事として終わらせず、自己の生き方への引き寄せ(自分事化)を図りながら深く自覚していくための戦略的アプローチとして本授業を構想・実践しました。
本授業の基本情報は以下の通りです。
- 対象・教科: 中学校 道徳科
- 教材名: 「ジェンナー」(ジェンナーとハンターの医学史)
- 道徳的価値・主題: 努力と堅忍不抜、初志貫徹、感謝と他者・社会への貢献[主として自己自身に関すること/主として集団や社会との関わりに関すること]
本授業においては、生徒が偉人の成功物語を客観的に評価するだけに留まらず、自らの内面(弱さや迷い)と深く対話し、道徳的価値の自覚を深められるよう、以下の指導目標を設定しました。
- 周囲の反対や困難に直面しても、明確な目的意識を持って主体的かつ継続的に努力を重ねることの本質的価値を多面的・多角的に理解する。
- 自分が正しいと信じた初志を曲げずにやり抜く不屈の精神(堅忍不抜・初志貫徹)の重要性を深く自覚し、安易な妥協に流されない強い意志を養う。
- 先人たちの苦難に満ちた挑戦と犠牲の上に現在の自己や現代社会が成り立っていることに感謝し、自らも将来に向かって他者や社会のために貢献しようとする意欲を高める。
これらの指導目標を確実に達成するため、生徒の思考を揺さぶり、道徳的価値を自己の課題として捉え直すことを可能にする授業構造と、効果的な発問およびワークシートの工夫を講じました。
2. 授業の展開とワークシート・発問の工夫
歴史的偉人を扱う道徳授業において、あらすじの追体験や道徳的価値の押し付けに陥ると、生徒は「自分とはかけ離れた特別な偉人の話」として受け止め、実生活への還元(自分事化)が阻害されます。本実践では、ジェンナーやハンターが直面した現実的な孤立、批判、葛藤に生徒自身を感情移入させ、その上で「もし自分ならどうするか」「自分自身の生活における努力や信念はどうあるべきか」という自省的な問いへ接続する発問構成とワークシート設計を行いました。
以下に、本授業における展開プロセス、中心発問、および狙いとする生徒の思考・葛藤のプロセスを整理します。
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授業段階
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中心発問・工夫
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狙いとする生徒の思考・葛藤(指導要領の視点)
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導入
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【中心発問】 私たちが当たり前に受けている現代の医療や安全は、過去のどのような人々の営みによって支えられてきたのだろうか。<br>【工夫】 身近な予防接種や医療技術に着目させ、その裏にある先人の知られざる情熱と苦難へ関心を向けさせる。
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単なる過去の歴史的知識としてではなく、現在の自らの生活と先人の生き方との不可分なつながりに気付き、本時の問い(生き方への探求)に対する主体的な学習意欲を高める。
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展開
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【中心発問】 周囲からの強い批判や先入観、果てしない苦難がありながらも、なぜジェンナーとハンターは信念を貫き通せたのだろうか。また、あなたが同じ立場ならどう行動しただろうか。<br>【工夫】 成功の陰にあった「世間からの孤立や失敗の恐怖」というリアルな葛藤を浮き彫りにし、自身の安易な諦めや同調圧力に流されやすい心との比較(自己開示)を促す。
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偉人の人間的な葛藤や孤独に深く共感すると同時に、「なぜ諦めなかったのか」「本当の努力とは何か」を多角的に分析し、困難に屈しそうになる自分自身の弱さと向き合い葛藤する。
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終末
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【中心発問】 ジェンナーやハンターの生き方を通して考えたことを踏まえ、あなたはこれから自分の目的や困難、そして社会に対してどのように向き合っていきたいか。<br>【工夫】 振り返りシートにおいて、偉人の生き方から得た道徳的価値を、自身の今後の目標や生活態度、他者との関わりに引き寄せて具体的な言葉で再構築させる。
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偉人の挑戦を自らの今後の生き方へと意味づけ直し、「不屈の心」「自己の行動への確信」「社会への恩返し・貢献」といった道徳的価値を自己の意志として力強く定義し直す。
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このような段階的発問構成と、生徒の試行錯誤を促すワークシートの活用により、生徒一人ひとりの内面において深い思考の深耕が行われ、授業終末における質の高い振り返り記述へと結実していきました。
3. 生徒の感想の具体的な引用と詳細な変容分析
道徳科における学習成果の検証にあたっては、生徒が学習の終末において振り返りシートに綴った「生の記述」を質的に分析し、道徳的価値の自覚がどのように深まったかを客観的に評価することが不可欠です(観点別評価との連動)。生徒の記述からは、偉人の姿を鏡として自らの生き方を省み、道徳的価値を自己の文脈へと引き寄せて自覚した質の高い変容が明確に看取できます。
道徳的価値の自覚・変容のマトリクス
生徒の正確な生の記述、抽出された主要な道徳的価値、および指導要領の観点に即した生徒の意識変容の到達度を以下の表にまとめます。
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引用テキスト
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抽出された主要な道徳的価値
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生徒の意識変容の到達度
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「ジェンナーやハンターのように目的に向かって精一杯努力することで、自信を持って自分がやっていることを言えるのだと思った。」
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努力と堅忍不抜、自己肯定感・内発的自負の獲得
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努力を結果のための手段にとどめず、主体的努力のプロセスを通じて揺るぎない自己確信と内面的な自負を形成する価値観を獲得している。
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「今日、僕は、努力について学びました。自分の正しいと思ったことをあきらめずに貫くことが大切だと思うので、僕も頑張ります。」
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初志貫徹、主体的な行動への決意
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抽象的な「努力」概念を「信じた正しさを貫く態度」として再定義し、自らの実生活における行動決意へと具体的に落とし込んでいる。
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「私は「あきらめない心」というものを最も学んだ。どんな状況になっても自分の考えを折り曲げずに進んでいこうと思う。」
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堅忍不抜、不屈の心・主体的意志の確立
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周囲の批判や同調圧力、困難な状況に屈することなく、自らの初志と信念を貫き通す主体的・堅忍不抜の意志を確立している。
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「今まで、ジェンナーのように自分の信念を貫き挑戦し続けた医学者たちがいたからこそ、現代の医学が成り立ち自分がいるんだと感じた。自分も人のために何かをしたいと思った。また、医学に感謝しようと思った。」
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感謝と他者・社会への貢献、歴史的・社会的視野
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先人の犠牲と挑戦に対する歴史的感謝から自己の存在基盤を認識し、その感謝を「他者や社会への寄与」として未来へ還元しようとする高い視座を獲得している。
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これらの生徒の質的変容を踏まえ、以下に本授業実践の成果を総括するとともに、今後の道徳教育における指導上の課題と展望を明示します。
4. 授業の実践成果と今後の課題
本授業実践を通して、偉人や歴史的事実を扱った道徳指導において「葛藤への共感」と「自省的発問」を組み込むことが、生徒の道徳的価値の自覚と自己の生き方の深まりにおいて極めて大きな成果をもたらすことが検証されました。授業の評価においては、振り返りシート等の記述データを多面的・質的に分析し、生徒一人ひとりの意識変容を精査することが、道徳教育の質的改善を推進する上で極めて有効な戦略的アプローチとなります。
本授業実践によって達成された具体的な成果は以下の通りです。
- 生徒の思考の深まりと自分事化: 偉人の快挙を単なる他人事の客観的歴史として称賛するにとどまらず、「信念を持つこと」「困難に立ち向かうこと」の意味を自らの問題として捉え直し、質的に深い振り返り記述を引き出すことができた。
- 偉人・歴史的教材の多面的活用: ジェンナーやハンターが味わった世間からの隔離や批判、未知への不安といった人間的葛藤を際立たせることで、道徳的価値(努力、初志貫徹、感謝、社会貢献)が実感と実効性を伴って多角的に受容された。
- 自己の生き方への還元と決意の形成: 「僕も頑張ります」「人のために何かをしたい」に見られるように、学習内容が単なる知識理解に終わらず、未来の行動様式や生き方を変容させる主体的決意へと昇華された。
本授業実践は、偉人の信念と挑戦に学ぶ道徳学習が、生徒の「自己を見つめ、不屈の意志を持って未来を拓く力」と「歴史や社会の支えに対する深い感謝のもと、他者に寄与しようとする心」を育む上で、誠に豊かな教育的価値を持つことを明確に証明しました。

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