32「命を守る授業」の授業分析 2005年の中1生徒
この授業は平成17年度種子島地区道徳教育研修会で公開研究授業をやったときの道徳授業です。この時点において、私の最高の道徳授業でしたが、なぜか、これ1回きりで以後やっていません。
授業では、身近な事故やニュースを取り上げながら、架空のゲーム世界と現実の死の違い、そして命の尊さについて深く考えさせています。また、実際の災害や事故を題材に、市民による救助活動のあり方や、命を守るために必要な知識と想像力を養う内容となっています。さらに、授業を受けた生徒たちが自身の経験や感情をワークシートに書き出し、他者との意見交換を通じて命の大切さ**を再認識するプロセスが詳しく記録されています。
この授業はけっこう気合いを入れて作成し、事後もまとめていたので、AIでもよいまとめレポートを作ってくれました。
『生命尊重の道徳学習指導案(命を守る授業)』の資料(
inochiwomamoruALL.pdf)から読み取れる、参観教師の感想・意見および生徒の感想・評価の傾向について分析結果をまとめました。1. 参観教師の感想・評価の傾向(A氏〜G氏の意見より)
参観した教師からは、授業の雰囲気や教材の工夫に対する高い評価が得られている一方で、授業構成や発問の深め方に関する専門的・建設的な検討点も出されています。
① 高く評価された点
- 温かい雰囲気と良好な信頼関係: 教室の雰囲気が明るく、教師と生徒の信頼関係が築かれているため、生徒が安心して素直に自分の意見を発表できている点が絶賛されています。
- 時事問題や自作資料・マルチメディアの活用: JR福知山線脱線事故や洞窟でのCO中毒事故といった実際の時事問題、ゲーム画面や音響などを用いた導入・教材化が生徒の興味・関心を強く惹きつけていると評価されています。
- 授業準備と誠実な姿勢: 学級通信(『道徳通信』)の発行や丁寧な教材研究・資料準備など、指導者の道徳教育に対する情熱と生徒への受容的な姿勢が印象に残ったと多くの教師が述べています。他の学校でも実践してみたいという声もありました。
② 建設的な議論・検討点
- 葛藤とオープンエンドの深め方: 授業での発問(救助したい/したくない等)について、「したくない」という少数意見の扱いや、生徒の本音・葛藤をさらに引き出して議論を深める余地があったのではないかという指摘(A氏)がありました。
- ワークシート記入中心の展開への質問: 多量のワークシート記入を中心とした授業構成について質問がなされました(A氏)。
- ※これに対し授業者(原口先生)は、「まず書くことで考えをまとめさせる」「記録として残ることで後の分析や振り返りに活かせる」といった意図を解説しています。
- 概念の厳密性: 「不慮の事故」と「不幸な事故」といった言葉の定義や解釈に関する指摘もみられました。
2. 生徒の感想・評価の傾向(アンケート・ワークシート・日記より)
生徒側からは、非常に高い授業満足度とともに、「命の重み」や「実際の救助行動」に対する具体的な意識変容が明確に示されています。
① 定量的な評価(アンケート結果)
- 「ためになった度」: 平均5.00点満点(5段階評価で回答者全員が最高評価の「5」を選択)。
- 「楽しさ度」: 平均4.54点と極めて高い満足度を示しています。
② 参観(研究授業)に対する心理
- 当日は約20名以上の参観者が集まったため、最初は「ものすごく緊張した」「手が挙げられなかった」という生徒が多くみられました。
- しかし、授業が進むにつれて集中が高まり、「いつも通り楽しくてためになる授業だった」「原口先生も少し緊張していて親近感がわいた」など、リラックスして主体的に取り組めた様子が日記に記されています。
③ 学びと意識の深まり(質的傾向)
- 「ゲームと現実の死」の違いの理解: テレビゲームのような「リセットできる死」と現実の「やり直しがきかない一度きりの命」の決定的な違いを実感し、死の不可逆性と命の重みを再認識しています。
- 「自分にできる具体的な救助行動」への気づき: 脱線事故の現場で近所の人々が初期救助に奔走した事例(資料4・5)を通じ、「大声で大人や救救車を呼ぶ」「声をかける」「自分にできる簡単な手伝いをする」といった行動の重要性を学びました。
- 当事者意識の向上(「見て見ぬふりをしない」): 万が一事故や事件の現場に居合わせた場合、「怖さや戸惑いはあっても、見て見ぬふりをせず、できる限りの手助けをしたい」という積極的な倫理的実践意欲が高まっています。
- 身近な人々への感謝: 自分の命や他者の命を大切にすることに加え、自分を育ててくれた両親や家族への感謝の思いを深めた生徒も多く見られました。
まとめ
本実践は、**「生徒にとって非常に満足度が高く、現実的・実践的な命の尊重についての意識を高めることに成功した授業」であると同時に、「参観教師にとっても教材開発や議論の深め方について多くの示唆を与える研究授業」**であったことがデータから読み取れます。
参観教師(A氏〜G氏)からの詳細な質問・指摘と、それに対する授業者(原口先生)の回答および感想の内容は以下の通りです。
1. A氏との詳細な質疑応答
- 「不慮の事故」と「不幸な事故」の言葉の定義について
- A氏: 本人に落ち度がない場合は「不慮」ではなく「不幸な事故」と呼ぶべきではないかと指摘しました。
- 原口先生: 辞書(岩波国語辞典)の「不慮の事故=思いがけずに人に降りかかる(不幸な)こと」という定義を提示し、回答としました。
- 発問前の「ゆさぶり」と葛藤場面(オープンエンド)の深め方
- A氏: 発問(「救助したいか」)の前に、救助者のPTSDや心の負担を伝える資料(資料6)を提示して「ゆさぶり」をかければ、「したくない」という本音や葛藤が増え、より深い議論やオープンエンドな記述ができたのではないかと提案しました。
- 原口先生: それも検討案(第二案)であったと明かしつつ、今回は①生徒の発達段階を考慮してまず「人を守るやる気」を引き出したかったこと、②時間の制約や長い資料の負担を考慮したことを説明しました。その上で、2時間目の発展学習として葛藤場面の資料を読み合わせ、「したい/したくない」で議論させる構想であったと回答しています。
- 少数意見(「楽にしてやりたい」という生徒の発言)の捉え方
- A氏: 苦しむ人を助けたいという意図が根底にあった可能性を考え、少数意見を大切に拾うべきだったのではないかと問いました。
- 原口先生: 生徒の前後の発言や状況から冗談まじりのものであったとし、日頃の観察からも真剣な発想ではなかったと説明しました。特に生命に関する授業での悪質な冗談・おふざけは御法度であるという指導姿勢を示しています。
- 多量のワークシート記入を中心とした授業展開について
- A氏: ワークシート記入が多い構成について質問しました。
- 原口先生: 「まず書くことで考えをまとめ、後で見返して思考の軌跡や事故を振り返ることができる」「提出物を集めて分析・反省を行うことで自分の授業改善につなげられる」というワーク活用の明確な目的を提示し、型に固執せず生徒のためになる授業を目指す考えを語りました。
2. B氏〜G氏の意見・感想
- B氏: 前任校での痛ましい事故体験(事前登山で同僚が亡くなり、助けられなかった教諭が辞表を出した経緯)に触れ、救助に携わった者の「心の痛み」に焦点を当てる資料6の重要性に強く共感し、自身の授業でも活用したいと述べました。
- C氏: 時事問題(事件・事故)の資料化やテンポの良さ、意見を出しやすい雰囲気を高く評価しつつ、複数の視点・価値観がぶつかり合って思考が深まる場面も見てみたいと提案しました。
- D氏: 生徒の表情の明るさ、授業者との良好な信頼関係、自作資料や音響効果といった工夫を絶賛し、副読本を活用した日常の指導法にも興味を示しました。
- E氏: 授業者の温かい人柄と道徳教育への情熱を評価しつつ、頭では理解していても実行できない弱さを克服するための「価値葛藤」の場面が必要であると指摘しました。
- F氏・G氏: 導入の工夫や受容的な指導態度、生徒が授業を楽しみにしてリラックスして参加している雰囲気を称賛し、今後の指導の参考にしたいと結びました。




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