24「好かれる努力」の授業分析 2022年の中2生徒
この授業も2000年くらいから10回以上はやっているが、残念ながら記録は最近のものしかない。最初に「中学校編 とっておきの道徳授業1」に掲載された私にとっては記念すべき授業。回数を重ねるにつれて紙資料からパワポに移り、ある意味主役の今野さんの最後まで載せるようになった。多分、今年もやろうと思っている。
パワポ教材(『好かれる努力2022-2.pptx』)の構造と指導デザイン
- 教材の選定とテーマ: 漫画『島耕作』シリーズに登場する初芝電器・福岡支社長の今野輝常の生き方を題材とし、「人間関係とこれからの生き方」を考える道徳スライド教材です。
- 導入(発問1): 「人は生きていく上で、好かれることって大切かな?」と問いかけ、5段階評価と理由を記入させます。
- ストーリー展開: 自分の過ちを認めず他人に責任転嫁し、周囲から嫌われて失脚・降格していく今野の姿を示します。
- 展開と内省(発問2・3): 今野に厳しく真実を告げた島専務の思い(発問2)や、生徒自身の中にある今野のような部分(発問3)を振り返らせます。
- 変容と終末(発問4): 島さんのアドバイスによって改心し、社内に花を飾るなど態度を改めた今野の定年退職の様子を描いた上で、「『好かれる努力』として何ができるか」(発問4)を考えさせます。
- 教師のメッセージ: 14歳の中学生に向けて「指摘してくれる存在を大切にし、自分なりに少しずつ好かれる努力をすることで周りの世界が変わっていく」と言葉をかけて締めくくっています。
参観教員の感想(A先生)
- 自らの体験との重なり: 小学生時代の「正義感のつもりで他人の間違いを指摘し、周囲から嫌な奴だと思われていた体験」を振り返り、反抗期にある中学2年生にとって非常に心に響く授業であったと高く評価しています。
- 授業手法・教材の評価: 活発な発表や話し合い・情報交換の場面が少なくても、大人向けの漫画教材と的確な発問によって「生徒が深く考え」「実践意欲を抱く」授業が成立する点に教材のすごさを実感しています。
中学2年生のワークシート分析(『kansou002.jpg』〜『kansou022.jpg』)
- 好かれることの重要性の認知(発問1): 多くの生徒が「まあ大切」「非常に大切」を選択し、「社会生活や仕事で困るから」「人間関係がうまくいかないと生きづらい」「信頼を得るため」といった理由を挙げています。
- 登場人物の心理理解(発問2): 島さんの厳しい言葉について、「今野さんに変わってほしい」「言いすぎたと思いつつも相手のためを思っている」と理解を示しています。
- 自己リフレクション(発問3): 「都合の悪いことを人のせいにする」「感情的になって身近な人に当たる」「嫌な態度を出してしまう」など、自分の中にある今野的な要素を素直に自覚しています。
- 今後の行動宣言(発問4): 「人に優しく接する」「相手の気持ちを考える」「お礼や笑顔を大切にする」「人のせいにせず自分の責任を果たす」など、具体的な実践目標を掲げています。
- 授業満足度: 「漫画でわかりやすかった」「自分の生き方や将来の人間関係を見直すきっかけになった」として、大半の生徒が評価点「5」や「4」の最高水準をつけています。
教育実習生の感想(『感想2022.pdf』)
- 教材と授業構成への感銘: 漫画『島耕作』という異色の大人向け教材が生徒を惹きつけており、自分自身を振り返る素晴らしい授業構成だったと述べています。
- 道徳指導の学び: 無理に発表させなくても生徒一人ひとりが真剣に自分事として向き合えることや、教師が生徒の意見を真面目に受け止める姿勢の大切さを学んでいます。
- 明日からの実践: 「人に好かれる努力」は生徒だけでなく自分たち実習生も明日から実践できるものであり、今後の教科指導や生徒対応に活かしたいと意欲を示しています。
全体的な成果とまとめ
本授業は、**社会人の人間関係を描いたリアルな漫画教材(『島耕作』)**を活用することで、中2という自他意識や反抗期の葛藤期にある生徒たちに「人間関係の現実」と「14歳からでも自己変容できる可能性」を強く意識させています。生徒・参観教員・教育実習生の三者それぞれが「自らの人間関係や生き方の省察」へとつなげている点が極めて特徴的です。
ワークシートおよび集計データを分析すると、生徒の思考は**「損得や受動的な理解」から「客観的な人間模様の解釈」「素直な自己省察(自分事化)」を経て、「能動的な実践意欲と自己変容の意志」へと深まる傾向**が明確に見られます。
以下に、授業の流れに沿った生徒の変容の4つの段階と傾向を整理します。
1. 導入:損得や回避傾向に基づく人間関係の認識(発問1)
- 初期の認識: 大半の生徒が「好かれること」を「まあ大切」「非常に大切」と捉えていますが、その理由は**「嫌われると社会生活や仕事で困るから」「人間関係がうまくいかないと生きづらいから」**といった、不利益を避けるための受動的な理由が目立ちます。
- 傾向: 好かれることを「生きやすさのための手段」や「リスク回避」として捉える表層的な認識からスタートしています。
2. 展開:登場人物の心理理解と多角的な視点(発問2)
- 対人心理の解釈: 島専務の厳しい指摘に対し、生徒は単なる「説教」や「怒り」ではなく、**「今野さんに変わってほしい」「相手のためを思って言っている」「本当の姿に気づいてほしい」**と、背後にある相手への思いやりや救いの意図を汲み取っています。
- 傾向: 表面的な言動の裏にある「相手を真に想う心」や「耳の痛いことを言ってくれる存在の価値」に気づき、他者理解の視点が多角的になっています。
3. 内省:「他者事」から「自分事」への引き寄せ(発問3)
- 自己の短所の直視: 「自分の中に今野さんのような部分があるか」という問いに対し、生徒たちは**「都合の悪いことを人のせいにしてしまう」「不機嫌な態度を出してしまう」「自分勝手になってしまう」**など、自らの短所や弱点を隠さず素直に振り返っています。
- 傾向: 教材の人物を単に「悪い人」と批判して終わるのではなく、**「自分の中にも潜む姿」**として重ね合わせる(自分事化する)大きな意識転換が起きています。
4. 終末:能動的な実践意欲と変容可能性への自己効力感(発問4・全体感想)
- 行動目標の具体化: 「好かれる努力」の意味が「嫌われないための受動的な行動」から、**「自分から挨拶や感謝を伝える」「人のせいにせず責任を果たす」「相手の気持ちを考えて行動する」**という能動的・利他狙いの行動へと変化しています。
- 変容への前向きな姿勢: 「59歳の今野さんでも変われたのだから、まだ14歳の自分なら今からでも変われる」「少しずつでも好かれる努力を重ねたい」といった記述が多く見られます。
- 傾向: 自分の未来や生き方に対して「主体的に変わっていける」という前向きな意思と自己効力感が芽生えています。
変容をもたらした要因(指導上のポイント)
本教材(『島耕作』)のリアルな葛藤描写と、**「自分の中にも同じ部分がないか振り返る(発問3)」**という構成が、中2という葛藤期にある生徒の素直な内省を限界まで引き出したことが、この深い変容につながっています。
投稿時刻 01:23 道徳のチカラ | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)



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