21「人の夢をかなえる仕事」の授業分析 2005年の中2生徒と参観教師
道徳授業「人の夢をかなえる仕事」の教材、生徒の授業記録、および参観した教員の感想から分析できる内容を、教材の特性、生徒の反応と学び、参観教員による評価と課題の3つの視点に整理して解説します。
1. 教材と授業構成の分析
- 実話(ノンフィクション)に基づく強い訴求力 1988年の上海列車事故で奇跡的に生還した高校生が、親友を失った事故のトラウマや周囲からの言葉に葛藤しつつも、命の尊さに気づき、英文科進学後に再び医師を目指して医学部に編入したという実体験が題材となっています。
- 「夢(進路)」と「命(生命)」を融合させたテーマ設計 単なる職業選択(キャリア教育)にとどまらず、「命があるからこそ夢を追うことができる」「助ける側の職業の意義」といった、命の尊厳と生き方を結びつける構成になっています。
2. 生徒の反応と学びの分析
- 高い満足度とメッセージの受け取り 授業後のアンケートでは、「楽しさ度」平均4.28、「ためになった度」平均4.47(5段階評価)と非常に高い評価を得ています。特に「命があれば夢を達成する可能性がある」というフレーズが多くの生徒の心に響いています。
- 命の尊さと生き方への還元 「事故はいつやってくるかわからない」「生きていること自体が幸せ」「自分も夢をあきらめずにがんばりたい」といった、命の重みや日常への感謝、自分の生き方を問い直す感想が多く見られます。
- 多様で率直な受け止め 一方で、「命のことなのに楽しいと言うのはどうか」「ビデオを見ていて眠たかった」「自分自身の別の道を進みたい」といった、率直な意見や客観的な視点を持つ生徒も存在しており、受け止め方のグラデーションが確認できます。
3. 参観教員(模擬授業)による分析と評価
教員による協議・感想からは、成果と課題の双方が明確に浮かび上がっています。
成果・肯定的な評価
- 等身大の題材による引き込み 有名人やスターではなく、身近な高校生の進路変更や葛藤を描いているため、中学生にとって親近感があり、授業に引き込まれる力があったと評価されています。
- 新しいアプローチの提示 「自殺予防」や「生き方の指導」を、家族や周囲の悲しみから語るのではなく、「進路や夢」と結びつけて展開した点に斬新さ・学習効果が認められています。
課題・改善点への指摘
- VTR(映像)の使い方 映像の途中で何度もブツ切りにして中断した点について、「集中が途切れるためじっくり見せるべき」「編集を工夫すべき」という指摘がなされています。
- 論理展開の強引さ 板書や発問において「自分で夢を完全にあきらめてしまう = 死」とする対比や、後半で「死・自殺」へ強引に結びつける展開に対して、「少し無理がある」「すっきりしない」との違和感が示されています。
- 発問のテンポと生徒が思考する時間の保障 矢継ぎ早な発問によって「教師の望む答えを探させるクイズ(禅問答)のような展開」になっていた点が指摘され、生徒がじっくりと考えを深める場面の確保が必要であると分析されています。
まとめ
本教材は、強烈なノンフィクションの力で生徒の感性を揺さぶり、命と将来の夢について深く考えさせる高い教育的効果を持っています。同時に、重いテーマを扱う授業においては、「概念(命と夢)の論理的な接続」と「教員の誘導を抑え、生徒が自分ごととしてじっくりと思考できる時間設定」が成功の鍵となることが、分析から浮き彫りになっています。
参観した教員による感想・評価は、大きく「題材・教材(ノンフィクション)の価値」、「授業構成・論理展開への課題と指摘」、「指導技術・メディア(VTR)の活用法」、「実践・追試への意欲と効果」の4つの類型に整理できます。
1. 題材・教材(ノンフィクション)の価値に関する感想
- 身近な人物による高い説得力 有名人やスターではなく、生徒に近い「等身大の高校生」の葛藤や決断を扱ったノンフィクションであるため、説得力があり強い引き込み力があると評価されています。
- 「夢・進路」と「生命・命の尊さ」の融合 単なる進路指導にとどまらず、「夢(進路)」と「生命(生と死)」を結びつけた点が斬新であり、従来の「周りが悲しむから」といった自殺予防指導とは異なる新たなアプローチとして高く評価されています。
- 発達段階(中学生・小学生)への適合性 生き方や将来を模索する中学生(特に中3頃)や小学生にとっても、深く考えさせることができる適時性のある題材であるとされています。
2. 授業構成・論理展開に関する課題と指摘
- 後半の「死・自殺」への強引な展開への違和感 「夢を完全にあきらめる = 死」とする対比や、後半で無理に「死」や「自殺」の話題へ持っていく構成に対し、「少し違う気がする」「すっきりしない」という指摘がなされています。自殺の資料を盛り込まなくても生きていく大切さは十分に伝わるという意見もあります。
- 「死」の捉え方や論理の展開に対する異論 逆に、「死」をより身近にしっかりと見つめさせなければ「生」の大切さは十分に浮かび上がらないという意見や、「命があれば夢が叶う」という提示だけでは「命だけでは夢は叶わない」ため最後にトーンダウンしてしまうのではないかという指摘もあります。
3. 指導技術・メディア(VTR・発問)の改善点
- VTR(映像資料)の活用方法 映像を途中で何度も細切れ(ブツ切り)に中断したことに対し、「集中が切れるためじっくり見せるべき」「編集を加えて見せるべき」という指摘が見られます。
- 発問のテンポと生徒の思考時間 矢継ぎ早な発問が「教師の求める答えを生徒に探させるクイズ(禅問答)のようになっている」とされ、生徒がじっくりと思索を深める時間の保障が必要だと評価されています。一方で、発問のテンポや声の大きさが心地よく集中できたという肯定意見も存在します。
4. 実践・追試への意欲と教育的効果
- 授業実践・追試への意欲 「一番やってみたい授業」「自分の学年(2年後)でアレンジしてやってみたい」など、参観者自身の授業づくりの参考として極めて高い関心が示されています。
- 生徒への前向きな意識付け 「命があるからこそ夢が叶えられる」という前向きな価値観を植え付けることができ、生きることや命を大切にする姿勢を育む効果があると期待されています。
投稿時刻 02:55 道徳のチカラ | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

最近のコメント